215■開催日:2024年7月11日(木)■講 師:順天堂大学医学部人体病理病態学佐伯 春美■生涯教育点数:専門―20点 卵巣腫瘍はその発生起源から,上皮性腫瘍,性索間質性腫瘍,胚細胞性腫瘍の3つに分類され,それぞれの腫瘍は良性,境界悪性,悪性の3段階の悪性度でさらに分類される。卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理 第2版ならびにWHO classification of tumour,Female gen-型度漿液性癌の原発部位の判断についてより詳細に記載され,検体の切り出し方法がこの原発部位の同定に重要である。そこで,上記取扱い規約やWHO第5版に基づいて,日々の業務で気を付けるべき点を解説し,実症例の提示を行う。 卵巣腫瘍は,上皮性腫瘍,性索間質性腫瘍,胚細胞性腫瘍の3つに分類される。上皮性腫瘍の中図1 p53, p16, WT-1, ER(一部)CK7, CK20, CDX2 (転移性腫瘍との鑑別のために)ER, Vimentin, ARID1A欠失HNF1β, ARID1A欠失, (ERは陰性)GATA-3, TTF-1, CD10 (ER, PgR, WT-1は陰性)ital tumours第5版では,卵巣腫瘍の中でも高異には,頻度の高い組織型として,漿液性腫瘍,粘液性腫瘍,類内膜腫瘍,明細胞腫瘍が含まれる。これらの病理学的鑑別のためには,どのような上皮細胞が腫瘍化しているかを観察し分類する必要があるが,悪性度が高くなるにつれて,本来の細胞の特徴が不明瞭化してしまうこともしばしばある。その際には,免疫組織化学染色が有用である。 上皮性腫瘍の組織型鑑別のみならず,上皮性腫瘍であっても類内膜癌のように性索間質性腫瘍のような増殖様式をとる腫瘍もあり,上記のような免疫組織化学染色が両者の鑑別には有用である。①漿液性腫瘍 卵管上皮類似の腫瘍細胞が増殖する。 多くの高異型度漿液性癌では,腫瘍細胞はp53に強陽性(または完全に陰性)となる。②粘液性腫瘍 粘液を細胞質に有する腫瘍細胞が増殖する。粘液性腫瘍に限られたことではないが,境界悪性腫瘍においても浸潤癌が一部に見られることがあるため,切り出し時には入念な検索が必要である。目安として,腫瘍径が10cmを超える場合,径1cmあたり2個が望ましいとされる。③漿液粘液性腫瘍 複数種類のミュラー管型上皮の増殖よりなる腫東京都医学検査 Vol. 53 No. 2 漿液性癌粘液性癌類内膜癌明細胞癌中腎様腺癌性索間質性腫瘍α-Inhibin『適切な病理診断のためにできること―取扱い規約に基づいて―』Ⅰ.はじめにⅡ.卵巣腫瘍の総論抗体病理細胞診検査研究班研修会―要旨
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